阿武隈 twitter版

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    港で昼飯を2人前食べて昼寝する

    4月22日 日曜 南の風17メートル(剣崎灯台観測値)

     1030出発。風であおられてモトラがふらつき走りにくい。1220MMF着。珍しく「本日出港禁止」の札がかかっていた。ハーバーマスターに聞くと、午前中は十数人いたけれど昼前にみんな帰ったとのこと。


    MMF港口の状況。南から15メートル超える風が吹いている

     1230上船。スパゲティーを2束茹でて、コーンビーフとコーン缶詰であえて食べる。満腹。船でスパゲティーを茹でるときは、<ソレイユルボン>の狭いシンクでも洗いやすいように小さな鍋を使う。なので、麺は半分に折って鍋に入れる。鍋の水も、節約と船の動揺でこぼれるのを防ぐため、鍋に3分の1程度しか入れない。「おいしいスパゲティーの茹でかた」の対極だ。


    「阿武隈」スパゲティーは半分に折った短い麺を少ない水で茹でる。きょうはコンビーフとコーンを添えた。器は2つあるが一人で全部食べた

     食べ終わったらすぐに洗いモノを片付ける。出港しなくとも、始動が思わしくない機関の整備や取れてしまったテルテールをジブに貼り付けるとかいろいろとやらなければならないことはあるのだが、きょうはクオーターバースに寝転がって本を読む、つもりが寝てしまった。

     風が強いとき、出港するかしないか迷う。

     伊豆諸島を巡航するとき、15メートルを超える風でも帆走できる技能と出港できる自信がほしい(自分の中での基準であるが)。強風でも適切なセールエリアに調整すれば危険でないと思うし、「阿武隈」は15メートル超の風で伊豆諸島海域を30時間帆走した経験もある。乗りこなせるだけのスキルはある、と思う。

     しかし、狭い港で自分の意思に反して船が流される入出港時の操船や激しく動揺する甲板でセールを上げ下げするときに体験した「恐怖」を思い出すと、船を出すのが怖くなる。その一方で、ほかのヨットが海に出ているのを見ると、自分も出港できたのではないか、ただ臆しただけなのではないか、と自責したりもする。


    そうはいっても、こういう風の音はいやだ

     1700下船。風はますます強くなって、MICSでは剣崎灯台風速20メートルを報じていた。

    微風の中をみんなで帆走する

    4月15日 日曜 晴れ 南の風 風力2のち4(阿武隈独自基準)

     0730、自宅を出発。「いつもより1時間早かったので、道が空いていて気持ちがよかった」といった前回よりさらに2時間も早い。道はいっそう空いていて快適に走れた。MMF着0930。ついに、“午前中”に港に来れた。港の仲間も「珍しいものを見た」という。

     きょうは、「みんなで一緒に帆で走ってみましょう」というMMFの「帆走会」に参加する。30分で艤装を済ませ1000のミーティングに出席してきょうのコースは“小網代の赤白ブイ”まで行って帰ってくることを確認する。「阿武隈」が1年前に参加したときは“城ヶ島の南西ブイ”まで行って帰ってくるコースをみんなと走った、が、そのときは肝心の南西ブイがメンテナンスで“なくなっていた”ため、途中で中止になった。

     1030に出港。機関の始動が悪い。アイドリングで回転がなかなかあがらず、排気の色も黒い。回転が順調になると排気も無色になる。

     「Donie」(TK25)の艇長が「阿武隈」に同乗してくれた。舵を「Donie」艇長にお願いして係船索やフェンダーを収納する。風は僅かしかない。スタートラインからぐっと引き返してジェノアを上げ、距離をかけて加速してスタートしようとするが、、あまりにもスタートラインから離れすぎたために1100のスタート時間になってもラインははるか先にあった。しかも、ほかの船はジリジリと進んでいるのに、「阿武隈」はラインを切る前に風がなくなって動くことすらできなくなった。風をほぼ真横から受けているのにクローズホールドのつもりでシートをぎっちり引いていた「阿武隈」は、風を捉えていなかったのだ。セールを開くと「阿武隈」はゆるゆると動き始めた。すでに、僚船は周りにいない。


    どうにもこうにも風がありません

     独航艦となった「阿武隈」は、南の風をアビームで受けながらのんびりと帆走する。阿武隈独自基準でいうところの「風力2」だ。城ヶ島南岸で正午になった。「帆走会」の最中なのに、ご飯とカレーを温めて「Donie」艇長と交代で食事を取る。「Donie」艇長が後片付けをしてくれた。ありがとう。

     城ヶ島を回って相模湾を北上。このころから風が上がってきた。諸磯の灯台を右舷正横にかわしたあたりで、“小網代の赤白ブイ”が右舷船首に見えた。と、その方向から赤白ブイを折り返してきた「Barbarian」(BW24)、次いで「ハルカゼ」(J24)を発見した。シングルハンドの「ハルカゼ」はぐんぐんと南下していくが、「Barbarian」が「阿武隈」に向かってきた。行き足を止めて合流。「Barbarian」艇長から「フィニッシュは赤白ブイ」と聞く。赤白ブイに向けて再び行き足をつけた瞬間、後方から競り合っている2隻のレース艇が迫ってきた。前方には停泊してる遊漁船がいて避けられない。あわててその場でぐるりと一回転してレース艇をやりすごす。多分、思いっきり邪魔をしてしまったと思う。悪いことをしてしまった。


    コース短縮を知らせるために「阿武隈」に接近しつつある「Barbarian」

     1338、赤白ブイを左舷正横に見て通過する。スタートから2時間38分。皮肉にもこのころから南風が上がってきた。ヒールも20度前後で“阿武隈独自基準”で風力3となる。ただし、艇速(GPSの対地速度)は4ノット前半とあまり出ない。風はますます上がってきて、城ヶ島灯台を東に見ることには、ヒールが30度前後となる。阿武隈独自基準でいうところの風力4だ。それでも艇速(GPSの対地速度)は5ノット前半にとどまる。

     感覚としては5~6ノット出ているはずなのだが、船底が汚れているからか、それとも、潮の流れが邪魔をしているからか。

     舵はずっと「Donie」艇長にとってもらい、私はセールのトリムに撮影と、ずいぶんと楽させてもらった。


    「Donie」艇長が舵を取ってくれたおかげで、こういうアングルでムービーが撮れました

     安房埼灯台を越えてクオーターリーチでMMFに向かう。このときようやく対地速度が6ノットを超えた。帆走のままフェンダーと係船索をセットしセールを降ろして機関始動。やはり始動が思わしくない。

     1530、MMF帰港。反省会に出席してから解装。セール畳も「Donie」艇長に手伝っていただいた。きょうは本当にありがとうございました。よかったらまた一緒に乗ってください。

     1800、MMF出発。

    “阿武隈独自基準”の風力階級とは

    “「阿武隈」週末行動”の記事にはその日の気象情報を記載しています。当初はMICSで公開されている剣崎灯台の観測データを記載していましたが、2007年4月から「阿武隈独自基準」の風力階級を掲載しています。

     通常、風力の測定には「ビューフォート風力階級」を参考に定められた風力階級表を使います。海上では海面の波の状況から風力を判断しますが、私は観察力が乏しいため、「さざなみが立つ」(風力1)、「波頭が砕ける」(風力2)、「小さな波が立つ」(風力3)、「水面に波頭が立つ」(風力4)、「泡や白波が立つ」(風力5)、「波が重なりしぶきが飛ぶ」(風力6)、「水の泡が筋を引く」(風力7)といった海面の状況を未だに区別できません。

     調べてみると、ビューフォートの風力階級は帆船の帆装と風の関係から決められていたとされています(ビューフォートは考案者である英国海軍提督“フランシス・ビューフォート”からきています。ビューフォートが定めた風力階級とシップ型帆船の帆装の関係は、早川文庫の海洋小説「ジャック・オーブリー」シリーズの巻末解説に記載されています)。そこで、「阿武隈」でもその方法をまねて、26フィートのマストヘッドリグ・スループにおける帆装状況を基準に風力階級を私的に定めて運用してみることにしました。

     阿武隈で定めた「阿武隈風力階級」を以下に示します。風力階級は、使用しているヘッドセールとメインセールの種類と帆走の状態(おもにクローズホールドにおけるヒール角)との関係で決めてみました。

    「風力0」
    ・帆走不能

    「風力1」
    ・ジェノアとフルメインで舵効速度が得られる
    ・ジブとフルメインで帆走不能

    「風力2」
    ・ジェノアとフルメインでゆっくりと帆走できる
    ・ジブとフルメインで舵効速度が得られる

    「風力3」
    ・ジェノアとフルメインで適切なヒール (クローズホールドで20度程度)を得て、快速な帆走ができる
    ・ジブとフルメインでゆっくりと帆走できる

    「風力4」
    ・ジェノアとフルメインでオーバーパワーとなり風下舷が水に潜る (クローズホールドでヒール角30度超)
    ・ジェノアと1ポイントリーフで適切なヒール (クローズホールドで20度程度)を得て快速な帆走ができる
    ・ジブとフルメインで適切なヒール (クローズホールドで20度程度)を得て、快速な帆走ができる

    「風力5」
    ・ジェノアと1ポイントリーフでオーバーパワーとなり、風下舷が水に潜る(クローズホールドでヒール角30度超)
    ・ジブとフルメインでオーバーパワーとなり、風下舷が水に潜る (クローズホールドでヒール角30度超)
    ・ジブと1ポイントリーフで適切なヒール (クローズホールドで20度程度)を得て、快速な帆走ができる

    「風力6」
    ・ジブと1ポイントリーフでオーバーパワーとなり、風下舷が水に潜る (クローズホールドでヒール角30度超)
    ・ジブと2ポイントリーフで適切なヒール (クローズホールドで20度程度)を得て、快速な帆走ができる

    「風力7」
    ・ジブと2ポイントリーフでオーバーパワーとなり、風下舷が水に潜る(クローズホールドでヒール角30度超)
    ・ストームジブと2ポイントリーフで適切なヒール(クローズホールドで20度程度)を得て、快速な帆走ができる

    「風力8」
    ・ストームジブと2ポイントリーフでオーバーパワーとなり、風下舷が水に潜る(クローズホールドでヒール角30度超)

    「風力9」
    ・2ポイントリーフでオーバーパワーとなり、風下舷が水に潜る(クローズホールドでヒール角30度超)

    「風力10」
    ・帆走不能

     「阿武隈」はストームジブを搭載していますが実際に使ったことはありません。そのため、「風力8」以上の風力階級は検証されていない「仮の指標」になります。

     「阿武隈」の風力階級は、あくまで私が勝手に定めたもので、汎用性はまったくありませんし、客観的な気象データとしての信頼性を保障するものでもありません。ただ、「阿武隈風力階級」に示した各帆装ごとにヨットの入門書などで適切とされている風速と、ビューフォート風力階級における相当風速がほぼ一致しているので、気象データとそれなりに連動して使えるのではないかと考えています。

    阿古漁港(2005年9月21日寄港)

    注意:ここで紹介するのは2005年9月21日から同23日時点における情報です。実際の寄港にあたっては、現地の人から情報を入手して、その指示に従ってください。

     阿古漁港は三宅島西岸に位置する漁港です。プレジャーボートが三宅島を利用するとき、多くの場合阿古漁港に入港します。

     海図W51「伊豆諸島」、電子海図「JP34NC9C」、PEC「東京湾とその付近」に阿古漁港が記載されています。W51とJP34NC9Cでは海岸線や岸壁の描画精度は高くありませんが、PECでは細かく線が描かれています。

     港内や周辺の詳細は「プレジャーボート・小型船用 港湾案内 南方諸島(伊豆諸島・小笠原諸島)」や舵社が発行している「ハーバーガイドブック第1集 三浦半島・伊豆諸島編」に紹介されています(Webで「プレジャーボート・小型船用 港湾案内 南方諸島(伊豆諸島・小笠原諸島)」を参照する方法はこちらを参照)。同じ三宅島にある坪田漁港では噴火で受けた被害を改修する工事が行われていて、港内の状況がこれらの記述と一部異なっていますが、阿古漁港では2005年9月の時点で、港内の改修工事はほぼ終了しており、加えて、先にあげた水路誌に記載されている港湾の説明と現在の状況はほぼ同じでした。なお、港の南東部に記載されていない船溜まりができていますが、ここは溶岩が流れ込んでしまったために利用できないと聞いています。

     下の画像は2005年9月23日の早朝に出港するときに撮影した港口の景観です。遠くからは白灯台とその背後に見える山の頂上に見えるアンテナ塔が顕著な目印になります。入港口は白灯台とその右側(南側)に見える黄灯標の間になります。入港するとき、ここから航路は右に(南に)折れて次いで左に(東に)向かい、防波堤にある白灯台を左舷(北側)に見ながら防波堤に沿って港内に進入します。2000年の火山活動によって航路に溶岩が侵入して従来より水路が狭くなったと言われていますが、26フィートのヨットで実際に航行したときは、それほど狭く感じませんでした。2隻の船が行き交うだけの操船余地が十分あります。


    阿古漁港港口。2005年9月23日0600撮影。背後に見える山のアンテナ塔と白灯台が遠景における阿古漁港港口の目印になる


    同日同時刻に撮影した阿古漁港航路の景観。溶岩が入り込んでいるがそれほど狭くはない。左に見えるのは港内防波堤に立っている白灯台で入港時はこの灯台を左舷に見ながら針路をとることになる

     入港すると、港は右(陸側、もしくは東側)と左(海側、もしくは西側)の船溜まりと、それぞれを分ける中央の突堤に分かれています。外来艇は海側船溜まりの西岸壁の、さらに南側半分のエリアに係留します。中央突堤と西側船溜まりの北寄り岸壁にも空きがあるように見えますが、中央突堤は地元のダイバー船が利用しており、西岸壁の北側半分も夕方になると地元の大型漁船が係留するので、外来艇は使用を避けたほうがいいでしょう。


    阿古漁港西側船溜まりの全景を南側岸壁からとる。右に見えるのが中央突堤。空いているように見えるが地元ダイバー船が頻繁に出入りするので外来艇は係留は避けたい。奥に見えるのが漁協の水揚げ岸壁。必ず誰かいるので、そこで係留場所の確認をしておきたい


    外来艇はこの西側岸壁の南半分に係留する。2000年噴火の改修工事で沈下した岸壁のかさ上げが行われた(白く見える部分)。岸壁が高くなってしまったが、大潮の干潮時でもパルピットから岸壁に「なんとか」よじ登ることができた

     トイレは魚市場西よりの奥に建屋があります。24時間使用可能。きれいなので注意して使いたいです。汚したら備え付けの用具で掃除しましょう。

     食事と風呂は「ホテル海楽」で利用(有料)できます。乾燥機付のコインランドリーもホテルの中にあります。そのほか、徒歩圏にスーパーも土産物屋もあるので食料や物資の調達は容易です(ただし、燃料補給は行っていないので、事情が分かりません)。



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    (ここで掲載した情報は参考資料であって、航海の安全を保障するものではありません。各自が入港する場合は正式な海図に基づいて操船してください。この情報を基に事故や損失が発生しても当方は一切の責任を負いません)

    チェーンを交換したモトラで試走する

     4月7日は土曜日だったが休日出勤になった。先週、パンクを修理してチェーンを交換してからモトラを走らせていなかったので、試走も兼ねてモトラで出勤してみた。
     今までは、「アクセルを開く→フロントスプロケットが回転→のびてたるんでいるチェーンが張る→チェーンが張ってから回転をリアスプロケットに伝達する→リアスプロケットが回転」という過程を踏むため、アクセルの動きと車体の加速にタイムラグがあった。そのため、発進時に細かいアクセルワークができず、いきなりガクッと走り出していたのだが、チェーンを交換してからは、微妙なアクセルの動きがそのまま加速に変換されるようになり、そのおかげで発進時の運転が「大幅に」改善された。
     「阿武隈」もモトラも製造されてから25年経つ。古い乗り物は「整備」「修理」に終わりがない。今回のチェーン交換のように、整備したことが“乗る気持ちよさ”をもたらしてくれると、「メンテナンス」と「ドライブ」は別々なものではなく、ともに一体となった「乗り物の楽しみ」なんだと、はっきりとした形で私に分からせてくれる。

     というわけで、来週は、ついに動きのおかしくなったスピードメーターを交換する予定。「阿武隈」も甲板掃除や取れたテルテールの貼り付け、切れそうなリーフロープの交換などなど、やっておきたいことが山積みだったりする。

    春の海をジェノアで帆走する

    4月8日 日曜 晴れ 北東の風、風力2。のち、南南東の風、風力3(「阿武隈」船上における実測値、ただし風力は「阿武隈」独自基準)

     投票を済ませてから自宅を出発。0930。いつもより1時間程度早い。道路も空いていて原付のモトラでも走りやすい。もっと早ければもっと気持ちよく走れるのだろうか。

     1130、MMF着。ハーバーマスターから原付用の年間駐輪パスを年額1万500円で発行することが決まったと教えてもらう。MMFの係留契約者は、年間駐車パスを3万1500円(税込み)で購入すると契約プレートを見せるだけでゲートを通れるが、原付は管理小屋でそのつど320円を支払わなければならなかった。たいした手間ではないが、メインスタンドを立てて手袋を外してポーチから小銭を用意してお釣りをしまってと、面倒といえば面倒だった。これで、プレートを見せるだけで原付も管理小屋を通過できる。


    港に着いたら「SEALUX」(ヤマハ25 マイレディ LTD)が出港していった

     1150、上船。風は北東から弱く吹く。きょうはキャビンでひと息つく前に艤装に取り掛かる。1220、艤装完了。前回、軽風の中を「じわじわと」帆走した感触が忘れられず、ヘッドセールにまたジェノアをセットした。出港するころには、港の中では吹いているのが分からないほどに風が落ちてきたが、帰港してきた「HARUKAZE」(J24)に乗っていた「バーバリアン」の艇長から「いい風が残っている」と聞く。港外にでると、その言葉のとおり北東から程よい風が吹いていた。セールをホイストして帆走。左舷開きのクローズホールドで東進する。クローズホールドでないと風が感じられないほどに弱い。剣崎を越えればもっと風が吹いているのだろうか。

     1400、風がなくなった。漂いながら、出港前に用意した「豚肉とコーンの塩コショウ雑炊」を食べ、タンク半分に減っていた燃料をポリタンクから給油した。雑炊は味付けに失敗した。水が多すぎた。肉が浸るぐらいでいい。


    「阿武隈」の船上料理は相変わらず見ためが悪い


    風がなくなって、聞こえるのはセールがばたつく音だけになった

     このままMMFに戻ろうか、それとも機走で三崎港を見物しようか。帰港して昼寝するのも魅力的だったが、きょうはバッテリーの充電もかねて城ヶ島をぐるりと回ってそれから三崎港を見物してこよう。ジェノアを下ろして西に進むこと20分。途中、安房埼南沖に仕掛けられた漁具の位置をクロスベアリングで測定するために、船を停めると南から風を感じた。機関を止めてジェノアを上げると帆走できる。試しに、点在する漁具の近くまで帆走で船を持っていってみる。私は器用でないので、帆走で細かい操船は苦手としていたが、風が弱いこともあってか、思ったところに船を進めることができた。漁具の近くまできたら船を風に立てて減速し、陸の目標と漁具の旗ざおとの見通し線方位をコンパスで測定する。

     程なく風があがってきた。三崎港入港をやめて帆走を続ける。左舷開きのアビームで針路300度。1500に反転してクローズホールド。最初左舷開きの針路210度で次いで右舷開きの針路150度。最後はクオーターリーでMMF入り口まで進む。波は高くなく「すべるような」気持ちのよい帆走だった。


    ほどよい風で波も静かなので、太陽の反射が波間にちらちらと光る

     1630、MMF帰港。1700、解装。フォクスルでちょっと眠ってから、1820にMMFを出発した。

    モトラのチェーンを交換する(現在)

     そういうわけで、4月1日は日曜なのに港にいけず、モトラのドライブチェーンを交換する。その前に、見当たらないチェーンアジャスタを捜したが見つからない。時間をかけたが駄目だった。

     後輪を外すまではきのうと同じ作業になる。ただ、チェーンの交換なので、ハブもリムも外さなくてすむ。楽勝かと思いきや、リアスプロケットを固定している「サークリップ」外しで手間取った。サークリップの取り外しは先達のモトラ乗りも、そのWebページやブログで苦労した経験を紹介している。ただ、専用工具を使えばすぐに外せるそうなので、私も近所の工具店で先端を取り替えられるものを購入してきた。1360円。

     これで、すぐに取り外せると思ったらっ。

    「サ、サイズが足りない……」

     先端をいっぱいに開いても「固定されているサークリップの穴にちょうど入る」幅しかない。この状態からさらに開いてくれないとサークリップは取り外せないのだ。結局、先達のモトラ乗りが経験した苦労を私も味わうことになった。ラジオペンチでぐぐっっと広げ(何度も外しながら……)、開いたすき間を「強力ねじ回しペンチ」でつまみ(つまむ前に何度もペンチが外れた……)、強引に「引っこ抜いた」。この工程だけで30分を費やした。


    やっと外れたスプロケットだ、チクショウメ


    ダンパーはまだいけそうだ


    新旧スプロケットを並べる

     サークリップが外れればスプロケットの交換はすぐできる。しかし、サークリップの取り付けでまた苦労することになる。ラジオペンチでぐぐっと開いて片側だけど潜り込ませ、あとは「強力ねじ回しペンチ」でつまみながら強引に「押し込んだ」

     チェーンの交換方法も先達モトラ乗りの言い伝え「古いチェーンに新しいチェーンをクリップでつなぎ、ギアをニュートラルにしてチェーンを送る」を真似させていただいた。ここでも古いチェーンのクリップを外すのに手間取る。オイルが固着してなかなか外れない。ブレーキクリーナを吹きかけて固着オイルをふき取って、やや「強引に」クリップを外して(チェーンクリップを外すときは回転方向にずらし、ロックするときは回転方法と逆にずらす)、新旧チェーンを接続。簡単に作業は進んだ。

     あとは後輪を組み込めばいい。ただし、チェーンの張りを調整してアスクルシャフトの位置を決めなければならない。片側しかアジャスタがないので、まずそこで張りとシャフト位置を調整する。この作業はアスクルシャフトを組み込んでボルトを仮止めした時点で行う。今回は前から3つめの目盛りでちょうどいいようだ。場所が決まったら、片方しかないアジャスタを調整してシャフト位置を固定し、それから反対側のシャフト位置を目盛りで合わせてそこでボルトを締める。今回はこの手順でシャフトの位置を固定した。

     本当なら、このあと、バッテリーと左バックミラーをパーツショップで調達してきたかったのだが、「なぜか」作業途中から雨が降り出してきた。きのうはそういう天気だったから割り切れたけれど、きょうはまだ降らないと思っていたのに。私が作業を始めると「いつもいつも」風が吹いたり雨が降ったりと、実に「メンテナンスに向かない」日和になってくれるよ。



    雨降りの中、パンクも直ってチェーンとリアスプロケットを交換したモトラ

    モトラのパンクを修理する(現在)

     先々週パンクしたモトラを3月31日に修理する。港に行く唯一の移動手段なので、きょうのうちに何とかしなければならない。雨が降る予報だったが、雨雲レーダーで見ていると夕方までは持ちそうなので、午後イチから始めるつもりだった。


    見事につぶれたモトラの後輪

     予定している作業は、後輪のパンク修理と伸びきったドライブチェーンの交換だ。パンクしたのは、先々週に港へ行った帰りだったが、その往路で走行中のモトラが段差に乗り上げた拍子にドライブチェーンがスプロケットから外れてしまったのだ。自転車のチェーンは何度も外したことがあるがバイクのチェーンが外れるのは初めて経験した。そのとき、「後輪に力が入らない」という“感触”があって、何が起こったのか分からなかった。モトラを停めて後輪をみて初めてチェーンが外れていることに気がついた。

     前々から近所のホンダウイングのスタッフに「チェーンが伸びきっているから交換したほうがいいよ」とアドバイスされていたのだが、「後輪外すの面倒なんだよね」と伸ばし伸ばしにしているうちに走行中にチェーンが外れてしまった。そのときの記録に「途中、チェーンが外れるトラブルがあったけれど、なんとか港に着いて海に出る。」とあっさり書いているが、それはその日の帰り道に起きたパンクのインパクトがあまりにも大きかったためで、「走行中にチェーンが外れる」という事態が起きてしまうのは、自分の整備不良が原因だけにパンク以上に由々しき問題であったりする。

     と、猛烈に反省しつつ「タイヤチューブ」「ドライブチェーン」「リアスプロケット」をいつものMOTO SHOP Mで調達する。それから、だいぶ前に片方のチェーンアジャスタが「柄の部分」が折れてただの「ワッシャ」状態になっていたので、これも年末にオークションで調達しておいた。リアのアスクルシャフトを抜く今回の作業でこれも取り付ける。

     なお、MOTO SHOP Mでは「タイヤを注文してその送信フォームのコメント欄にタイヤチューブも購入したい旨を書き添えておく」という注文フローなので、タイヤとセットでないとタイヤチューブが購入できない。予備のタイヤ(しかもオリジナルのレクトアングル2)を1本持っていてもいいのだが、試しに「実はタイヤチューブだけを購入したいのですが」とメールで問い合わせてみたら願いを聞いてくれた。

     昼食をたべて、「では、始めましょう」と道具とパーツを手にして駐輪場に行こうとしたら、

    「うっ、チェーンアジャスタがない……」

     そういえば、年末に入手してから、しばらく正規のパーツ置き場ではない「リビングのテーブル」に放置状態だった。「あああああ、こんなことしていたら、“また”使うときに見つからなくなるなー」と思っていたら案の定、そうなった。

     数時間捜し求めたがない。早くしないと雨が降るー。やむを得ず、パンクの修理とチェーンの交換を優先して行うことにする。うっ、また肝心なことを忘れていた。

    「チェーンのコマ落としをしなければ……」

     モトラのドライブチェーンは94コマで、今回取り寄せたホンダの純正チェーンは98コマになっている。作業者が組み込むバイクに合わせてコマを合わせるようになっているが、この作業には専用工具が必要になる。パーツショップで安いものは6000円台で売っているが、一回限りの工具にしてはちょっと高い。でも、忙しいショップにチェーンのカットだけお願いするのも気が引ける。しかし、近所のホンダウイングは快く引き受けてくれた。待ち時間が約1時間で料金は1820円だった。

     なんだかんだで、モトラのリアアスクルシャフトのボルトを回し始めたときは、もう1700を過ぎていた。ブロック2枚で車体をジャッキアップして後輪を浮かす。シャフトを抜いてスプロケットからチェーンを外してタイヤを抜き取る……、っとっとっと。リアブレーキパネルとつながっているブレーキロッドとステーが引っかかった。本来ならシャフトを抜く前にこちらを外しておかなければならない。ステーを留めているボルトの割りピンを飛ばして失くさないようにすべし。


    この割りピンを外すときに「ぴょーん」と飛ばさないように注意

     リアタイヤからハブをホイールリムから外し、それからホイールリムを左右に分割する。購入直後に錆付いたスチールのリムとチューブが癒着して半日かけても外れなかったが、アルミのリムはボルトを外すと簡単に左右に分かれた。後はチューブを取り出して交換すればいい。ここまで20分。古いチューブに空気を入れてみると空気の抜ける音がする。小さな穴が開いていた。タイヤを改めると、細い板バネのようなものが刺さっていた。


    取り外したモトラの後輪



    こんな鉄片が後輪に刺さっていた

     新しいチューブに軽く空気を入れて、それからタイヤに潜りこませる。次いで左右のリムをはめ込んでボルトで固定して空気を入れる。空気圧は1キロ/センチ。ここまで40分。ついに雨が降ってきてしまった。チェーンが気になるけれど、走れるし段差に乗り上げなければ大丈夫さ。後輪を組み上げて試走する。ローで発進、ギアをセカンドに入れた瞬間、“後輪に力が入らない”感触が。ギアチェンジの衝撃でチェーンが外れてしまった。これでは駄目だ。港まで行くことはできない。明日も後輪を外す作業から始めよう。