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    モトラのスピードメーターを修理する

     モトラの不調は続く。
     2007年の春先からスピードメーターの表示が安定しなくなった。正常な速度を表示したり反応しなくなったりという症状が繰り返される。前輪から異音がするようになって、最初ホイールベアリングの不調を疑ったが、スピードメーターケーブルのホイール側接続部が緩んでいるのを締めなおしてから音がしなくなり、どうも、スピードメーターギアのあたりに問題があるのではと考えるようになった。

     動く動かないを繰り返しているうちに、今度はスピードメーターから異音がするようになった、と思ったとたん、メーターの針がすごい勢いでぐるぐると回り、そして折れた。

     オークションでモトラの中古スピードメーターを調達して、針の折れたメーターと交換する。この段階では、メーター内部の歯車に問題が生じて正しく動作しなくなったかと思ったが、メーターを交換しても症状は改善されなかった。


    上が調達したスピードメーター。下が針がふっとんだスピードメーター。モトラ乗りのWebページをチェックすると、振動で針が折れるケースがほかにも確認された

     そこで、ホイール(正しくは、ホイールと対になっているフロントブレーキパネル)内部に組み込まれているスピードメーターギアに問題があるのかと考え、ブレーキパネルを分解したところ、内部が銀色のスラッジでいっぱいになっているのを確認した。スピードメーターギアもホイールの穴に差し込んで前輪の回転を伝える突起部分がつぶれていた



    つぶれていたスピードメーターギアの突起部分

     この突起とホイールのはめ込みが不完全で、前輪を組み上げたときにスピードメーターギアがつぶれ、そのまま走行して突起が削れたのかと推察し、つぶれた突起部分を整形して、再度、モトラに組み込んだが症状は改善されない。突起が削れて長さが足りないのかとも思い、今度は替えのスピードメーターギアを用意することにした。しかし、このパーツも欠品で新品は入手できない。代替策は、オークションでフロントブレーキパネルを入手しそこからスピードメーターギアを取り出すことになる。Yahooでは、パーツ業者がフロントブレーキパネルを出品しているが、リアブレーキパネルより点数が少なく、開始価格も高い。

     たまたま、R&Pのフロントホイールとブレーキパネルの中古セットが格安で出品されていた。モトラとR&Pのホイールは同じ形状をしている。モトラに流用できるだろうと落札したが、届いたR&Pのブレーキパネルから取り出したスピードメーターギアは、モトラのそれよりわずか薄い形状をしていた。モトラに組み込んだが、やはり症状は改善されない。

     もう一度フロントのブレーキパネルを分解して、元のパーツを組み込んで、手で回して見る。すると、ときどき歯車がかみ合ってガッチリと固まってしまう。と、ここで、モトラに組み込まれていたスピードメーターギアの形状がおかしいことに気がついた。正常なスピードメーターギアの歯車はタイコの胴のように中央が膨らんだ形をしているが、取り出したスピードメーターギアは臼のように真ん中がへこんでいる。

     さらに、つぶれた突起を直したときに撮影した画像といまのスピードメーターギアを比較すると歯車のブレードの太さがぜんぜん違う。おおお、分かった。以前見たスラッジは突起が削れたのではなく、歯車のブレードが削れた跡だったのだ。げげー。

     何かの拍子でギアがかみ合って動かなくなり、ケーブル接続側の歯車によって、スピードメーターギアのブレードが削られてしまったのだろう。



    左が今まで使ってきたスピードメーターギア。右が今回調達したスピードメーターギア

     ここで、もう1つ、今度はホイール側でおかしなことに気がついた。ホイール側には、スピードメーターギアの突起が差し込まれる穴があけられているが、その穴の開いている円周部分に溝ができている。

     ということは、

    (イ)スピードメーターギアの歯車部分のブレードが削れてしまった。(ロ)ブレードが削れてかみ合わせに不都合が生じてスピードメーターギアの回転がロックした。(ハ)スピードメーターギアの突起部分がホイール側の差しこみ穴から飛び出して、つぶれながらもホイール部分を溝のように削ってしまった。(ニ)突起がつぶれ、差しこみ穴がけずれてしまっため、スピードメーターギアの引っ掛かりが弱くなって回ったり回らなかったりするようになった。

    というあたりがスピードメーター不調の原因のようだ。
     原因が分かっても解決にはならない。スピードメーターの表示を回復させようとすると、フロントホイールの交換が必要になる(スピードメーターギアの突起差込口が必要なので、リアホイールは流用できないので注意)。このパーツも欠品で新品が入手できない。中古を調達することになるが、車輪の回転に直接影響するパーツなので状態の悪いものは使えない。オークションでもなかなか出品されないフロントホイールだが、ちょうどタイミングよく、オークションで程度のよさそうなホイールとフロントブレーキパネルのセットが個人から安く出品されたので落札した。

     届いたホイールとそこから取り出したスピードメーターギアを、自分のモトラのパーツとそれぞれ見比べると、消耗の度合いがよく分かる。


    左が今まで使ってきたホイール。右が調達した中古ホイール




    上が今まで使ってきたホイール。下が調達した中古ホイール。上のホイールで差しこみ穴のある円周部分がU字状に彫れているのが分かる

     ホイールを交換して、スピードメーターギアを移植して(フロントブレーキパネルは、ブレーキシューを交換したばかりなので、今までのものを使う)フロントホイールと組み合わせる。この状態で、ブレーキパネルにスピードメーターケーブルを差し込み(スピードメーターからケーブルを外しておく)、前輪を回して(モトラでは、メインスタンドを使っていればフロントタイヤが浮く)、スピードメーター側のケーブルが回っているかをチェックする。回っていれば、スピードメーターケーブルは、フロントホイールに正しく組み込まれていることになる。


    スピードメーターケーブルを差し込んで動作をチェックする

     メーターケーブルが動作することを確認して、ケーブルをスピードメーターと接続して作業は終了した。10キロ程度試走したが、スピードメーターの表示は安定し、オドメーターも正しい距離だけ回った。

     春先のフロントホイールからの異音から始まって、スピードメーターの表示、チェーンの伸び、エンジンの抱き付き、マフラーの破損と、しばらく続いたモトラの不具合も、これでひと通り修理が完了した。修理費用(主にパーツの調達費)は、見ためがよれよれの中古モトラをもう一台購入できるぐらいかかってしまったが、走っているときの感触はとても快適になった。

    モトラのマフラーを取り替える

     モトラのエンジンが復活した最初のMMF行き走行で、マフラーが折れた。家族から「ネタのために折ったの?」と疑われるぐらい、たて続けてモトラは壊れた。


    折れてしまった純正マフラー


    こんな感じでエキパイ付け根が折れた

     モトラの純正マフラーは欠品で、もはや入手できない。モトラは、大型のメインスタンドを備えており、汎用のマフラーを取り付けるとメインスタンドを収納した状態でエキゾーストパイプと干渉してしまう。そのため、モトラに取り付けられるマフラーの種類は限られる。

    選択肢その1:メインスタンドのステーを切断、もしくは移設、または、メインスタンドを撤去して、汎用のマフラーを取り付ける。

     この場合、同排気量のカブなど、流用できるマフラーの種類は増える。その半面、モトラの特徴的なデザインであるメインスタンドをあきらめることになる。また、ステーを切断すると強度が弱くなるので、これもモトラの特徴である、重量貨物の積載時にメインスタンドの強度が問題になる。

     なお、ステーを移設する場合は、溶接ができる技量と道具をそろえるか、そういう作業に対応できる業者に依頼しなければならない。

    選択肢その2:モトラ純正マフラーのリプロダクト品を調達する。

     種類は少ないものの、リプロダクトマフラーが存在する。現在入手できるのは以下の2種類。

    1.バイクショップ「NEUTRAL」が製作しているモトラ用ノーマルマフラー

    2.個人がYahooオークションに出品している純正と同形のステンレスマフラー

    選択肢3:中古の純正マフラーをオークションで落札する。

     数は少ないものの、モトラのマフラーがオークションに出品される。多くの場合、穴あきか、穴を溶接で埋めた状態で、ごくまれに、見た目にきれいなマフラーが登場する。ただし、そういう上物は、9000円から1万円をはるかに超える価格で落札される。

     このほか、スタイルは純正と異なるが、メインスタンドを装備したまま取り付けられるマフラーが、2種類ほど確認されている。

     私は、個人が製作しているリプロダクトステンレスマフラーを購入した。このマフラーの製作者はモトラやモトコンポなどのリプロダクトパーツを積極的にYahooオークションに出品しており、その種類と品質には定評がある。小は6ボルト対応のバルブセットや燃料バルブのコック(小さいとはいえ、純正に近いリプロ品を自ら起こしている)から、大は、消耗品なのに純正が入手できないドライブスプロケットまで用意されている。


    上が純正マフラー、下がリプロダクトマフラー

     届いたマフラーは、頑丈なつくりで溶接部分も十分な厚みを持っていた。マフラーの脱着作業は簡単で、エキパイ取り付け部の2箇所とマフラーステーの1箇所、そして、マフラーカバーの2箇所のボルトを外すだけで済む。商品の説明では、モトラの個体差や完成時期の違いなどで、キックペダルやブレーキペダルとの干渉が発生する可能性があるとされていたが、私のモトラでは、なにも手を加えずとも干渉は起きなかった。

     30分もかからずに作業が終了して試走する。アイドル時回転は安定。低速走行時のトルク十分。加速も順調。高速走行は時速「やを」キロをマーク、したような気がした。


    交換作業は簡単にできた


    キックペダルと干渉せず


    メインスタンドのステーとも干渉せず

     オークションの開始価格は2万6000円、希望落札価格は3万円と、中古の純正マフラーや、汎用マフラーと比べると高いが、ステンレス製の新品マフラーということで長く使えるし、最大の問題であったメインスタンドと共存できるメリットは大きい。個人製作ということで心配するかもしれない仕上がりや品質についても、自分が入手したマフラーでは何も不安を感じなかった。溶接の盛りやパイプやタイコの質感は、純正より強固に見えたほどだ。

     代替マフラーに苦慮しているモトラユーザーの悩みは、このマフラーでほぼ解決する。唯一の問題は、入手がオークションに限られるため購入できる機会や数が限られているのと、個人に依存しているマフラーなので、これから先もずっと購入できる保証がないということだろう。


    タイコの合わせ目にたっぷりと盛られた溶接。タイコ表面のモールドや細かい形状も純正とそろえている


    エキパイ付け根付近も頑丈で溶接もしっかりしている。仕上がりに不安はない

    7カ月ぶりの帆走

    11月4日 日曜 晴れ 北東の風、風力3(阿武隈独自基準

     上船は1330。FRP作業を行うべきなのだろうが、北東の風が適度に吹いている。どうにもこうにも我慢できず出航した。1400。ヘッドセールにレギュラージブ、メインセールはフルで上げる。風が弱いので、雑誌で読んだ「船の行き足を止めて、アビーム気味に風を受けながらメインセールを上げる」を試したが、セールが重くてあがらない。

     生まれて初めてディンギーに乗ったときに、行き足をなくした状態から、セールを引き込んでスルスルとすべるように走り出す感触が気持ちよくて、それまで興味のなかったセーリングにのめりこんでいく、出発点のようなそんな感触をセーリングクルーザーでも感じたいと思ったのだが、うまくいかなかった。

     いつものように機関を使って風に向かい、メインセールを上げる。艤装でミスをして、ジブシートがシュラウドの内側に入ってしまった。こちらは帆走しながら直す。実に、7カ月ぶりの帆走だ。風をひろうため、沖出ししてから東に向かう。風はそれほど強くなく、ヒールは20度に及ばない。

     1530、剣崎灯台の南まで達して反転。港に向かう。1630、帰港。ソーセージコース一本を走っただけだが、たいへん気持ちがよかった。

     解装して1730。ひと休みして1800下船。

    缶ビールが破裂した

    10月21日 日曜 晴れ

     ようやく、本当にようやく整備が成ったモトラで港に向かう。エンジンは、抱き付き前のように調子よく回ってくれる、と快調に走っていたら、いきなり爆音が炸裂した。モトラを停めてチェックしたらマフラーがエキパイ付け根から折れていた。このマフラーも欠品。さらに、流用パーツもなし。モトラ乗りの多くは、さびて折れたマフラーの代替品調達に苦労している。


    伊豆大島が見える。もうすぐ冬が来る


    宮川湾の水も透明度が増してきた

     1400、上船。ミニバーにあった缶ビールのフタがめくれて開いていた。どうやら“発酵”して破裂した模様。この船を購入したときから積んであった酒類をすべて処分する。キャビンが酒の匂いで満ちる。

    1700、下船。

    10月28日は仕事で休めず。代休も取れず。

    「空気入れ」でトラブル。港にいけず。

    10月14日 日曜 晴れ
     久々に復活したモトラで港に行こう。でも、修理を終えてホンダウイングから家まで試走したときに感じた後輪の「グニュグニュ」感が気になったので、出発前にタイヤに空気を入れようとした。しかし、なぜか空気が入らない。以前、パンクを修理したときに、空気入れバルブを左側にセットしてしまったため、空気入れバルブとスプロケットが干渉してしまい、それで空気が入らないのかと考え、急きょ、後輪を外しすことにした。
     結局、空気入れの「空気圧ケージ」から空気が漏れていたのが原因で、そこを手で押さえながら、なんとか後輪に空気を入れることができた。しかし、面倒な後輪の脱着で時間がかかってしまったので、港に行くことができなかった。
     手間のかかる後輪を外したので、先日ようやく見つけた「チェーンアジャスター」も組み込む。

    モトラのエンジンが復活した

     ホンダウイングにお願いして1週間後に修理が終わった。抱きついたピストンを見せてもらったが、ざっくりという溝状の傷はないものの、側面一面に擦り傷がついていた。


    これが抱き付きを起こしたピストン

     お願いしていたのは腰上修理だったが、長いこと懸案になっていたギアペダルシャフトとブレーキペダルシャフトのオイルシールも交換してくれていた(ここからエンジンオイルが漏れていたことが、抱き付きを起こしたそもそもの原因だ)。こういうところに気がついてくれるショップは信頼できる。

     ホンダウイングの請求額は当初見積もっていた2万円もしなかった。パーツ実費(ほとんどがガスケットとシール代)を含めても3万円かかっていない。とはいえ、ピストンとシリンダーケースを調達するのに中古エンジン2つ必要だったのは想定していなかった。結局、抱き付きの修理に6万円強かかったことになる。

     ショップから家まで数分走った感触は、以前より加速が力強くなったように思えた。ずっと上り坂だったからかもしれないが。

    モトラの中古エンジンから“また”ピストンを取り出す

     抱き付きを起こしたモトラのエンジンを復活させるため、中古エンジンからピストンとシリンダーを調達することにしたが、最初にオークションで落札したエンジンは、貴重なフロントスプロケットが健在だったものの、肝心のピストンは傷だらけだった。

     やむを得ず、再度中古エンジンをオークションで調達することにした。前回と同じ、2万円台の「実働」エンジンを候補に上げたが、念のため、出品している業者に「ピストン傷の有無」、「抱き付き歴の有無」、「圧縮圧」などを質問したところ「確認していない」との返事だった。

     今度入手する中古エンジンのピストンが無傷であるとは限らない。予算が限られているので、スタート価格が高いオークションに入札するわけにもいかない。とはいえ、オークションで出品されていたモンキーRのピストンを移植するのは不安だ。

     結局、業者が「確認していない」と答えたエンジンを落札した。キャブレターとブレーキペダル、キックペダルがついて2万円というのは、モトラの中古エンジンオークション価格としては安い。それだけ、痛んだエンジンと出品者は評価したということだろうか。

     落札したエンジンは、「紙」で「包装」された状態で送られてきた。包装紙には防水コーティングが施されていたが、破れたところからオイルが漏れてしまい、業者が包装丸ごとビニール袋にいれて持ってきた。前回の中古エンジンのときと同様に、「中を開けずに荷物に異常がないか確認してくれ」と対応した家族に要求したらしいが、今回は、そのまま受け取ることにした。

     エンジンカバーやシリンダーケース、シリンダーヘッドのカバーはだいぶ痛んでいた。フロントスプロケットは歯が消耗して鋭くとがっていただけでなく、オイルと泥で埋没していた。前回入手したエンジンとは逆で、とことん使い込まれていたのかもしれない。


    今度の中古エンジンは包装されてやってきた



    フロントスプロケットの歯は鋭くとがっていた

     と、ささやかな希望を胸に抱いて分解に取り掛かる。前回と同じ方法になるので作業は捗った。固くしまってたクランクシャフトの点検窓を開けるのに少してこずったが、ここは、小径の薄いスパナをドライバー代わりに使うことで解決した。前回、なかなか外れなかったシリンダーヘッドとシリンダーケースのガスケットも、ゴムハンマーで叩くだけでガゴンと取れた。

     今回の作業で大変だったのは、ピストンピンの取り外しだった。ドライヤーで温めると膨張率の違いで簡単にピンが外せるそうだが、このときは、個人のバイク整備ブログで紹介されていた、径がちょうど合うソケットドライバーをあててゴムハンマーを使って叩き出す方法でしのいだ。


    こんな感じで点検窓を開いた



    こんな感じでピストンピンを外した

     姿を見せたピストンは、すすで黒かったけれど、表面に傷はない。これなら使える。取り出したピストンとシリンダーケースを箱に入れ、モトラで煙をはきながら近所のホンダウイングに走った。修理は数日で済むとのことだった。


    取り出したピストン。側面が黒くこげているが傷はない。しかし、なんというか、やっぱり小さい