阿武隈 twitter版

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    巡航に向けて燃料を補給する

    7月21日 祝日 晴れ 南の風 風力3(阿武隈独自基準)

     1130、自宅出発。1330、MMF到着。20日に相模湾オープンレースが行われた20日は盛況だったそうだが、「その反動かね」とハーバーマスターが言うようにMMFは静かだった。晴れてほどよく風も吹いていたが、きょうは巡航でほぼ消費した予備タンク(20リットル×2)に軽油を補充し、アンカーケーブルをすぐに使えるように整える作業を行う。思い立ったときにそのまま船に乗り込んで、すぐ巡航に出られるようにしておきたい。

     日差しは強いが気持ちのいい南風が吹いてくる。デッキにオーニングをかけて昼食にする。家から持ち込んだ塩漬けの鶏肉と玉ねぎをゆでる。食べている間デッキを眺めていると鳥の糞が異様に多い。たまらず、食べ終わってから甲板掃除に取りかかる。MMFの浮き桟橋には水栓が来ていないので、バケツで汲み上げた海水をデッキにぶちまけてブラシでこする。黒い固形は取り除けたが白い染みはなかなか落ちない。


    夏でもオーニングをかければ吹き込む風のおかげで涼しく過ごせる

     甲板掃除が一段落ついてから、宮川町のガススタンドで軽油を購入する。こういうとき、モトラの積載能力がものをいう。原付なのに、前後のキャリーに重いタンクを二個のせても安定して走れる。MMFに戻って「阿武隈」を管理棟前の岸壁に回して重いタンクを船にのせる。

     せっかく舫いを解いたので、船底掃除とバッテリーの充電をかねて三崎港の北条湾をぐるりと回ることにする。ハーバーマスターに申告してから出港。穏やかと思っていた海は南風が吹き込んで波立っていた。機走で30分ほど航行してMMFに戻る。風が吹き込むフォクスルでひと休みして、1730、下船。あ、アンカーケーブルの整理をすっかり忘れていた。


    管理棟の入り口につばめが巣を作っていた

    船に行けない週末は晴れる

    7月13日 晴れ

     12、13日の週末は天気がよかったが、所用があって家で過ごした。船に行ける週末は天候が悪く、用事がある週末は晴れる。どうしてか分からないが、そういう巡り合わせが多い。 次の週末も台風7号の影響で天気は崩れるのだろうか。

     ヘルメットのシールドを用意しておこう。モトラの雨天走行が苦にならなければ、用事のない週末が暴風雨であっても、用事のある週末に限っていい天気であっても、不機嫌にならずにすむだろう。たぶん。

    式根島巡航Take2──波浮からMMFへ

    7月6日日曜 南の風 風力1(阿武隈独自基準)

     0500、起床。チェックリストにしたがって出港準備。0550、出港。新しい船だまりと港の入り口付近で建設中の防波堤を偵察する。風なくメインセールを揚げただけの機帆走ですすむ。海面はフラットで、きのうより視界は利く。


    波浮港内側からみた、新しく設けられた船溜まり。左奥に見えるのは波浮港入り口の西防波堤


    波浮港東側外防波堤の外側(南側)に建設中の防波堤。奥に見えるのは龍王埼灯台

     霧のなかに隠れる伊豆大島東岸を進む。平均で5.5ノットと思ったより速度がでない。霧が濃くなってきた。本船の霧笛が右舷方向、東海域から聞こえる。東京湾入口中央と伊豆大島の風早埼を結んだラインと「阿武隈」の針路が重なる海域で本船と出くわした。回避行動。本船は、回避が十分とれる距離で視認できる。東海汽船の高速艇も大きな引き波が遠方から視認可能。


    霧に隠れる伊豆大島東岸

     1130、帰港。MMFの入口がたくさんの浮遊物で塞がれていた。スクリューに巻き込まないように蛇行して避けながら入港する。風なく晴れて暑い。休み休み、セールを収容し船内を片付ける。




     風が入って涼しいフォクスルでひと眠りしてから、1500に下船。さっきまで晴れていた港が白い霧でおおわれていた。風力発電の風車も見えない。身軽にするため使わなかった服を船においていく。まるよし食堂で遅い昼食をとり、坂を上って坂を下ってまた坂を上ってバスに乗って駅まで帰る。

    式根島巡航Take2--波浮に向かう

     速度3.5ノットで残航程20海里以上。夜の野伏漁港に入るか、日没直前の若郷漁港に入るか、目の前の波浮に入るか。野伏漁港は過去に2回入港したことがあるが、夜間に入港して係留できるほどの自信はない。若郷漁港は横付けになるのでそれほど困難ではないが、日没後の入港は避けたい。やはり、この海況において伊豆大島を越えて南下するのはリスクが高い。1200、目的港を波浮に変更する。午後になって霧がとても濃くなってきた。視界は100メートルを切っているかもしれない。気休めかもしれないが、航海灯を点けてフォグホーンを鳴らす。

     あれ、霧中航海時の発音間隔はどうなっていたっけ? とにかく、1分間隔で10秒程度鳴らす。(正解:視界制限状態における音響信号=エンジンで航行中は2分を超えない間隔で長音を1回。帆走中は2分を超えない間隔で、長音1回に引き続く短音2回)


    う、ちょっとこれはまずい。視界は100メートルを切っている

     1430、GPSは波浮港が目前であるといっているのに、周囲は何も見えない。気配すら感じない。ほどなく、海と霧の境目に白い波がかすかに見えた。海岸線だ。と、次の瞬間、波浮港入口の西岸にある灯台がいきなり現れた。びっくりした。おもわず声を上げた。


    あ、白く波立っている。海岸線だ


    と思っていたら、ぬおぉぉっ、と灯台が現れた!

     1500、波浮入港。奥の岸壁は、木更津から来た大型パワーボートの十数隻が集団で占拠している。そのほか、神奈川の大型パワーボートとYAMAHA 28Sが、やはり横付けて泊まっていて「阿武隈」を泊める場所はない。漁協脇の西側岸壁も本船が係留していて使えない。やむを得ず、漁港前岸壁の一番外側につける。


    連休でもないのに、梅雨も明けていないのに、奥の岸壁は“横付け”のパワーボートとセールボートで埋まっていた


    しかも、漁協脇の岸壁は本船で埋まっている。「阿武隈」は漁協前岸壁の西端に係留した

     船を固定してセールを束ね、甲板を片付けてトイレ。その帰りに本州巡航中のYAMAHA 28Sに声をかける。船長がキャビンに招いてくれてコーヒーをふるまってくれた。航海中、とくに港の係留するときの話を聞く。1600、「阿武隈」に戻って機関室のビルジを取り除く。10リットルバケツ一杯分と量がかなり多い。スクリューを回しながら調べるとスタンチューブの漏水ペースが速かったのでグランドパッキンを増し締めする。給油も行う。軽油の残りはポリタンクの10リットルとなった。


    うっ、これはひどい。10時間の機走でビルジがこんなに溜まった

     係船した漁協前西端は突堤になっているので南からの風が強く吹き付けてくる。1700、その風を避けるため岸壁中央にシフトする。その作業中に漁協の人から、夜に船が入ってくるのでもっと端に寄せるように指示を受ける。本船船首のすぐそばまで寄せる。1800終了。食事をとろうとしたら、漁船の船長がきて、そこでは潮が岸壁を越えてしまうから、別な岸壁に止めてある漁船に横付けするように指示を受ける。その漁船の船長には電話で連絡を入れておくとのこと。離岸してフェンダーともやいを右舷から左舷に移して指定された漁船に横付けする。船長が甲板で作業を手伝ってくれた。1830作業終了。夕食。日誌をつけて2100に就寝。波浮についてから忙しかった。風呂にも入れなかったよ。


    南の風が強くなってきたので、本船の船首“真下”に係留場所をシフト。しかし、その後、地元漁船の船長にお世話していただいた漁船に横抱きさせてもらった


    入港後、濃霧で閉ざされた波浮港。地元の人も「こんなにひどいのは初めて」といっていた



    入港したのは土曜日。地元の高校生がカッター漕練を行っていた

    式根島巡航Take2--潮と濃霧に阻まれる

    7月5日土曜 曇り 南の風 風力1(阿武隈独自基準

     0430起床、0530出港。案の定、出港が遅れた。風弱く波高し。メインセールのみの機帆走で進む。出港したとき、靄がかかっていたが、向かってくる船を回避できるだけの視界が確保されていると判断して航海を続行した。予定航路は伊豆大島西岸を回り込んで南下するコースを選択する。


    霧で剣崎が見えない

     0830、霧が濃くなり視界が狭まる。30分ほどで日が差してきて視界が回復する。午前中はこの繰り返しが続く。霧が濃い状態でも、遊漁船、本船ともに十分回避できる距離で確認できる。とはいえ、常時周囲を見張り、白い霧のなかから“じわり”と染み出してくる本船の黒い影を探し続けなければならない。気の抜けない航海が続いた。


    遊漁船の前方に本船の黒いシルエットが見える

     0930、相模湾の真ん中でそれまで5ノットあった対地速度が3ノットに下がる。スクリューに何か巻き込んだか。試しに反転して進むと対地速度は7ノットを越える。問題はスクリューではなく海流だった。2ノット近くの速さで北上しているようだ。日が差して暑くなってきた。風はほとんどない。海面はトロリとしてフラットだ。1030、服装をそれまでのオイルスキン上下から半袖半ズボンに長袖アンダーの組み合わせに変える。

     1200、速度3ノット、ここまでの平均が3.5ノット。この時点で残航程は23海里。このペースでは日没前に式根島野伏港へ入港するのは無理だ。新島の若郷港もギリギリだろう。前回と同様、伊豆大島西岸で悩むことになった。


    南に進むと3ノット台



    北に進むと7ノット台

    式根島巡航Take 2--出港前夜

    7月4日金曜 曇り

     2015、会社を出て、2025品川発の京急ウィングに乗る。電車のなかで評価用の防水PCに電子海図とナビソフトをインストールする。三浦海岸駅発、剣埼灯台経由で宮川町バス停を通る最終バスを一本違いで逃す。濃い霧でおおわれた三崎口駅からバスに乗り、栄町のバス停からだんだん暗くなっていく道を下って上って下って港に向かう。真っ暗闇の港に歩いていくというのは、何度やっても気が進まない。管理事務所のポストに出港届けと航海計画書を投函する。

     2230、上船。船で食事をすませ、作業着に着替えて出港準備作業にかかる。膨張式ライフジャケットのポケットに入れた携帯電話の照明はちょうど手元を照らしてくれるので便利だ。固定方法を確実にすればもっと使いやすくなるだろう。2330、作業終了。霧が晴れてきた。

     翌日の日の出と日の入り、潮汐と航路転針点をホワイトボードに記入して、0000、就寝。翌朝起床は0300、出港は0330の予定。ちょっと無理かな?

    1GMのサーモスタットを交換する

    6月29日 日曜 雨 南南東の風8メートル(剣埼灯台観測値)

     エンジンのサーモスタットを交換するためMMFに向かう。予報で雨が強くなると言われていたので、土曜のうちにブーツを購入しておいた。とはいえ、バイク用のレインブーツは高価なので釣具店で安いゴム長靴を買った。これはWebページで見つけたバイク便ライダーのアイデアで、実際に試すと、確かに足元は全然濡れず足首も柔らかいのでブレーキ、ギアチェンジともに問題ない。やったね、これで雨が降ってもモトラで問題ない。幹線道路に出てスピードをあげたとたんに、
    「イタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタァイィィィイ!!」
     顔に当たる雨粒が凶器になった。ヘルメットにアドオンするシールドを用意するの忘れていたー(私のヘルメットはゴーグル仕様なのでシールドが付属していない)。雨が激しくなって雨粒が大きくなるにつれて顔中の痛みが増していった。

     1330、MMF到着。石堂山を越えたあたりから風も強くなり、港には雨のカーテンが白くたなびいていた。まるよし食堂で昼ごはん。全身ずぶ濡れなので外のテーブルで食べる。1400、上船。エンジンルームを開けてサーモスタットを交換する。

     サーモスタットカバーの直前に燃料管があるので一見ボルトが外せないかと思ったが、ボルトをゆるめてギリギリまで引き出すとボルトの穴からちょうど抜けるらしく、カバーがズリンと外せた。カバーを外してやや固めに差し込んである古いサーモスタットを抜き取る。サーモスタットカバーから古いガスケットを削りとり、内部に固着していた白い固まりを真鍮ブラシとカッターナイフで除去する。カバーの内部には海水が流れる管も成形されているので、その内部も詰まっていないかチェックした。


    サーモスタットカバーの前に燃料管があってボルトをふさいでいる



    でも、幸いなことにボルトをめいいっぱい引き出すと……



    ズリンとカバーが外れてくれる

     カバーの清掃を終えたら、新しいサーモスタットを組み込んでガスケットと共にカバーをはめる。カバーには上下の向きがあるので間違えないこと。管の太いほうが上流になる。下流側には水の流れを示す矢印がモールドされている。


    左が古いサーモスタット、右が新しいサーモスタット



    カバーの内部に白い固形物が付着していた



     組み上がったら、エンジンを始動してスクリューを回しながら高速運転を15分ほど続ける。海水の温度が上がる6月にほとんど出港していなかったので、スクリュープロペラの汚れが気になっていたが、スクリューの作る水の流れは向かいの桟橋まで届いていた。高速運転を続けたのちに回転数を半速まで落とす。前はこのときに警報がなっていた。今度はどうか。回転数を落としてほどなく警報がなった。サーモスタットを交換しても改善されなかった。回転数をあげて運転を続けても止まらない。エンジンを止めて冷やし、再度始動しても状況は同じだった。


    古いサーモスタットを熱湯につけたらゆっくりと弁が開いた

     サーモスタットを交換しても症状が改善されなかった船の例が、Webでいくつか報告されている。その場合、応急処置としてサーモスタットを取り外しているケースがあった。サーモスタットは、ある程度温かい海水だけがシリンダーブロックに設けられた水路に流れるようにするパーツなので、これがないと低温の海水が高温の金属に触れることになる。寒冷地でなければ大丈夫というリポートもあるが、恒久的な処置としないほうがよさそうに思える。

     こういうケースの恒久的な解決策としては、(1)冷却水取り込み口のサイズをアップする。(2)シリンダーブロックにある冷却水流路の詰まりを除去する、というのが報告されていた。時間があるときにシリンダーブロックの流路をチェックすること(この作業では“唐草日記(航海記録)”と”満天☆の海-2”、そして“propman's diary”のリポートを特に参考にさせていただきました。とても助かりました。ありがとうございます)。

     きょうは雨降りなので明るいうちに帰る。夜になるとメガネについた水滴が対向車のヘッドライトを乱反射して視界をふさいでしまう。1630、下船。 自宅から持ってきた巡航被服セット(Tシャツと化繊のアンダー上下、そして半そで半ズボン上下のそれぞれ3セットと、船内作業服)をキャビンにデポ。これで、会社から直接船に来ても巡航に出られる。幸い雨が上がっていたが横浜の金沢八景あたりからまたひどくなってきた。雨のなかを走るうちに、信号待ちでエンストしたり、リアブレーキのペダルが踏んだまま戻らなくなったりと、モトラの調子が悪くなってきた。晴れたときにリアブレーキのチェック。やっぱり、雨の日のモトラは大変だなー。