5月20日 日曜 晴れ 風速6メートル(剣崎灯台観測値)
機関室のビルジを排水してグランドパッキンの増し締めを終えたあたりで、なんだかもう疲れてしまったのだが、先日まとめた【整備項目リスト】に挙がっている「マストの左右傾き」をチェックする。シュラウドのテンションバランスが適正でないとマストを失う危険があるとヨット雑誌のマストチューニングの記事では必ず記載されているので、前々から気になっていた。
両舷に3本あるシュラウドの真ん中にある1本の根元に向けてスピンハリヤードを引いてみる。スピンハリヤードは右舷側シュラウドの根元まで届いた。そのまま左舷側シュラウドの根元に持っていくとその根元まで3センチ程度届かない。やはり、マストは右舷側に傾いているようだ。
実を言うと、「阿武隈」はマストだけでなく船体そのものも右舷に傾斜している。ソレイユルボンのコックピットロッカーは右舷側だけに用意されていて、「阿武隈」では、そこに予備アンカーとそのチェーン、予備の軽油ポリタンク20リットル×2個という重量物をはじめとして足船代わりのゴムボートや係船索の予備やらを収納している。なお、正規の20リットル燃料タンクも右舷側に設けられているが、この分は左舷側に設置されている清水タンクで相殺される。
マストの傾きを直す前に予備のアンカーとチェーンを移動して左右のトリムを改善できないかと、コックピットロッカーを開けるとロッカーの床がきらきらと光っているのに気がついた。
「うぉっ!」
コックピットロッカーに水が溜まっている。しかも量が多い。これにはあわてた。ロッカーの荷物をすべて甲板に上げて溜まっている水をバケツでかい出す。水は30リットル程度溜まっていた。船体に亀裂が入って浸水していたら最悪だ。しかし、溜まっている水に指をつけてなめてみると「それほど」塩辛くない。ロッカーからハルの内側をチェックしてみても穴や亀裂は確認できない。かい出したあとに水が滲みだしてくることもない。
コックピットロッカーに大量の水が溜まっていた
ロッカーの荷物を全部甲板に上げた。ついでなので左右のトリムをチェックしたら正常に戻っていた。やはり右舷への傾斜は積載物の配置が原因だったようだ ハルの内側をしげしげと見てみると、水に濡れてカビの生えた黒い筋がデッキから続いている。その先にスタンションを固定するナットが見える。前に新島でスタンションに力がかかって甲板が割れたところだ。ロッカーから体を乗り出してそのスタンションの根元を見た。
「うおぉぉぉぉん」
甲板に亀裂が入っている。ここから雨水が浸入してコックピットロッカーに溜まったのだろう。ハルに穴が開いていたわけではないのでそれはそれでよかったが、この亀裂を修理しないと外洋には出られない。以前、新島でスタンションを岸壁に打ち付けて甲板の3カ所に亀裂が入ったときは修理に9万円かかった。今度は1カ所でもあるし自力で修理をしよう。いつかはFRPの扱い方を知っておかなければならないし。
巡航のために確保した有給は修理のために費やすことになりそうだ。
雨水の浸入を防ぐために、浴槽用防水パテで応急処置をとる。
1900、下船。とにかく、疲れた。
甲板に亀裂が入ったスタンションの根元。スタンションだけが折れてくれたほうが被害は少なくて済むのだが