阿武隈 twitter版

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    穏やかなMMFに帰港する

    10月15日 金曜 曇り時々雨のち晴れ、北の風 風力6から1(阿武隈独自基準)

    大島の緯度に到達しないうちに日付が変わってしまった。すでに三宅島坪田漁港を出港してから12時間がたっている。風が北に回りMMFに向かうには間切って進むしかない上に、西に向かって流れる潮の影響を受けているらしく、東に向かうと対地速度が3〜4ノット前半までしか出ず、西に向かうと舳先は磁方位330〜350度を示すのにGPSの針路は300度前後まで落ちてしまう。ただ、メインセイルをワンポイント分宿帆したおかげで、舵柄を引く力はほとんどいらなくなった。

    夜間帆走中にコンパスの表示が見えにくくなった。目が疲れてきたせいだろうか。キャビンを見ると、データ通信手段として使う携帯電話(Xperiaむにゃむにゃ)を充電するアダプタのパイロットランプが消えている。が、まだ充電は終わっていない。ん?
    バッテリー電圧が下がったか。試しにバッテリーを舶用電装系から機関始動系に切り替えると、携帯電話の充電が再開しただけでなく、両色灯と船尾灯、そしてコンパス照明が明るく輝き、コンパス示度が問題なく見えるようになった。

    17時に点灯してから8時間が過ぎ、あと4時間以上は点灯しておかなければならない。夜が明けるまで帆走が続くとして、両色灯と船尾灯を13時間使うのに必要な容量は(10ワット+10ワット)/12ボルト×13時間≒約26アンペアアワー。ほかに、航海ソフト端末として使う携帯電話(X02HT)のバッテリーを充電したが、せいぜい4ワットアワーを2セット。舶用電装系バッテリーは12ボルト35アンペアアワー。うっ、ぎりぎりか。かといって機関始動系のバッテリーには手をつけたくない。オルタネータが35アンペアアワーなので、1系統のバッテリーは35アンペアアワーが適正サイズと思うが、もう少し大き目のものが必要か、もしくは舷灯系バッテリーを増設するか。

    とにかく、帆走中なれどエンジンを1時間回して充電。未明にもう一度機関を1時間回して充電。バッテリーの管理に神経を使う航海になるとは思わなかった。

    0130、タックして大島に向かう。大島の北を交わせるかと思ったが、角度が出ずまだ安心できない。1時間ほど帆走しているうちに左に竜王埼灯台、進行方向に風早埼灯台の光が見えてきた。しかし、雨交じりの闇夜ゆえ、島の姿は見えてこない。不思議なもので、大島が目の前に横たわっていると思うと、たとえ、GPSが「阿武隈」は大島と房総半島の真ん中にいるといっていても、すぐ目の前に大島の海岸線があるような錯覚に陥ってしまう。

    0300、早々にタックして房総半島に向かう、が、今度は進行方向に灯台の光が見えた。白閃光15秒周期は野島埼の灯台か。すると、今度は房総半島の岩礁がすぐ目の前にあるような気になってしょうがない。折りしも、目線の上になる水平線の向こうに、多数の蛍光灯を輝かせている箱状の物体が見える。GPSの示すポジションに関係なく、それが、崖の上に立つ校舎のように思えてくる。その物体は、まもなく「阿武隈」の舳先を右から左へと進んでった。やっぱり船だ。ようやく安心できた。

    0430、タックして北西に向かう。やっと大島の北端を余裕で交わせる高さまで上がってこれた。0530、夜明けの時間だが、まだ暗い。0600、ようやく航海灯を消す。時間がたつにつれて雲を透して空が明るくなる。0700、風が東に回りMMFを目指す針路で進めるようになったが、同時に風も落ちてきた。0730、2ノットを下回るようになった段階で帆走をあきらめる。MMFまで9海里のところだった。

    あとは、もう舵柄を握って進むだけだ。波も穏やかになってきた。夕食用として出港前に用意しておいたご飯と缶詰で15時間振りの食事を取る。たまらない眠気と戦いながら2時間走り、1030、穏やかで静かなMMFに帰港した。実に23時間に及ぶ航海になってしまった。

    係留作業終了後、管理棟のハーバーマスターに報告し、あとは、夕方まで眠った。その夜は上限の月で、いい風が吹くという予報だった。好条件に出港したくなったが、さすがに止めた。翌朝もいい風が吹くようだが、やはり無理せず夜のうちに解装。16日は0800に起床して、船のビルジと自分のビルジを処分。機関の冷却水ポンプの漏水対策を施して、1130に下船。三浦海岸で昼食を食べて京急で帰った。

    2 件のコメント:

    KAH さんのコメント...

    夜間航海がなかなかできずにいます。
    航海しながら迎える夜明けは素晴らしいでしょうね…それとも眠いだけ…なれると淡々としているものなのでしょうかね。

    匿名 さんのコメント...

    KAHさん、IIbです。

    洋上の夜明けは、驚愕であったり壮大であったり安堵であったり覚醒であったり。

    夜間航海は一度体験すると、心理的ハードルはだいぶ低くなります。
    私は、いまだに夜の海に出て行くのは抵抗があって、日が出ているうちに出港して洋上で日没を迎えるようにしています。