阿武隈 twitter版

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    小さい携帯電話で電子海図を使ってみた

    「航海術は紙の海図とハンドコンパス」が信条の「阿武隈」ですが、シングルハンドで、しかも、オートパイロットが壊れたままゆえ、舵柄を握ったまま甲板から離れることなく使える航海機器を必要としていまして、これまで、タブレットタイプのTOUGHBOOKを甲板においたまま使ったり、Windows Mobileベースのスマートフォン「X02HT」に航海ソフト「Pathaway」を導入したりなどしてきました。特に、X02HTとPathawayの組み合わせは、キャプチャしたビットマップを海図データとして用意するという制約があったものの、多彩なな表示機能が使いやすいだけでなく、防水パックに入れてしまえば普段使いのスマートフォンが高機能GPSプロッタに相当する使い勝手を実現していました。実際、「阿武隈」では普段の航海や巡航でX02HTをライフジャケットのポケットに入れて、すぐに情報を参照できるメインの航海機器として長いこと運用してきました。

    しかし、X02HTにもスマートフォンとしての性能に限界がきて、2010年後半にAndroid搭載モデルに切り替えました。となると、Androidで使える航海ソフトが使いたくなります。幸い、Androidマーケットでは「NAVIONICS」の航海ソフトが入手できます。NAVIONICSでは、収録する海図エリアごとに異なるパッケージを用意していますが、日本海域を収録しているのは「Marine : Pacific Is. & Japan」です。価格は1000円程度(為替レートの変動に併せて価格も変わる)。わずか1000円で、水路情報のデータベースを収録したベクトルデータで構成される電子海図と、機能はシンプルながら、ルート作成機能やGPSトラッキングなど基本機能は備え、FacebookやTwitter、WindForcastなどネットワークと連動した情報共有機能もカバーする航海ソフトが入手できます。

    NAVIONICSの海図データと付属する航海ソフトの概要については、すでに別な場所で記事が掲載されています。そこでは、7型ワイドで解像が1024×768ドットのディスプレイを搭載したタブレットデバイス(GALAXY Tab)で運用した実例が紹介されているので、ここでは、4型ワイドで解像度が320×240ドットの小型スマートフォンに導入した場合について記します。

    ディスプレイのサイズが小さくなって解像度が低くなっていますが、表示領域のズーミングやパンニングが速いので、海図の一覧性が低下して使い勝手が悪くなることはありません。小型スマートフォンでは、CPUの動作クロックが低くなるなど性能も抑えていますが、画面の描画速度や水路情報の検索と表示処理速度は、より性能の高いタブレットデバイスとほぼ同じです。

    一方、本体を握ったままの片手で操作が完結するので、詰め開きの帆走で激しくピッチングしても、風を後方から受けた帆走で大きくローリングしても、操作が確実にできます。海図に表示されるバルーンのタップ、航路標識の選択、距離と方位の計算で使うポジションピンの移動でもストレスを感じることもありません。

    収録されている海図はベクトルデータで構成されているので、拡大しても表示は乱れず、また、収録されている水路情報のデータは充実しており、かつ、バージョンアップのたびに更新と追記が施されます(特に最近のVer.5.0からVer.5.1の更新で大幅に追記された)。

    モバイルデバイス向けのNAVIONICSはiPhoneとiPad版が先行して登場していましたが、「なぜか」Marine:Pacific Is. & Japanが日本で購入できません(2011年2月末時点)。幸い Android版は日本でもPacific Is. & Japanが購入できています。購入したときのGoogleアカウントを設定すれば、異なるデバイスにも導入できるので、画面サイズと解像度を重視して大画面タブレットデバイスを使うのもよし、片手で使える使い勝手を重視して小さなスマートフォンに入れるのもよし、とユーザーの考えにあわせてデバイスを柔軟に選べるのもAndroid版のメリットといえるでしょう。

    で、現時点における「阿武隈」の電脳航海システムは、NAVIONICSを導入した小型スマートフォンを防水パックに入れてライフジャケットのポケットに忍ばせ、通常の航海では主にそちらを使用するほか、「Software On the Boaut」を導入し、AISレシーバーを接続した、5型ワイドディスプレイ(解像度は1024×768ドット)搭載Windows XPタブレットPCを甲板に設置して、詳細な航海情報の確認とAISによる本船動向の確認、衝突警報のチェックをできるように運用しています。

    電脳航海システムというと、大がかりな仕掛けを想起させるようですが、「阿武隈」では、小さなタブレットPCが甲板に転がっていて、時折ライフジャケットから"携帯電話"を取りだすだけなので、見た目的には「なんかすごい機械がたくさん取り付けられているかと期待していたのに裏切られた」という感想をいただくことが多いようです。

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